声もギターもベースもドラムも、音楽はすべて「鳴るもの」で構成されています。
しかし、「鳴るもの」はこの世に楽器だけではありません。
鍵束、コップ、林檎、椅子。
日常のどれもが鳴り響く可能性を秘めています。
それと同時に、ひとりでに「鳴るもの」は存在しません。
波の音、雨の音、木々の間を風がくぐる音。
この世にあるものは他者から鳴らされて初めて、「鳴るもの」となるのです。
どんなに押し黙って見えても、何かと響き合うことで、何もかもが「鳴るもの」となり得る。
しかめっ面のおじさんも、言葉を知らない赤ん坊も。
日焼けのわんぱくな少年少女も、ハイヒールのお姉さま方も。
恋人と過ごすワンルームも、ひとり寝返りを打つ布団の中も。
惹かれ合い振れ合えば、たちまち全部「鳴るもの」になる。
鳴らそうとする誰かがいる限り、この世のものは全て鳴る。
鳴らないものなど存在しない。
zembnal -01.10.2024